片山
本日はお忙しいところお越しいただき本当に有り難うございます。まず、世界で5番目に小さな国 サンマリノ共和国についてお聞かせ下さい。
カデロ大使
サンマリノは、世界で一番古い共和国です。これまで、一度も戦争をしたことがなく、軍隊がありません。警察だけです。また、治安が良く安全で、刑務所はあるのですがわずか7部屋あるだけです。おもしろいことにその刑務所は、元は修道院でした。
片山
なるほど、とても安全な国なのですね。さて、カデロ大使は1975年に東京に移住されたそうですが、東京ではどんなお仕事をされていたのですか。
カデロ大使
私は、もともとジャーナリストでイタリアの大きな出版社の特派員として、25年間東京で勤務しました。その経験を生かして外交官に転身しました。まず、サンマリノの名誉領事になって、領事から総領事、そして大使になりました。
片山
現在、駐日大使全体の代表である「駐日外交団長」をされているそうですね。また、大変な親日家とお聞きしているのですが、日本に興味をお持ちになったのはいつ頃からですか?
カデロ大使
パリに留学していた時、ソルボンヌ大学のクラスメートに日本人がいました。その彼が、『源氏物語』のフランス語版を勧めてくれました。私はこの本を読んで、日本への興味が掻き立てられました。彼は私より年上で、いろいろ日本の話を教えてくれました。彼も、日本の素晴らしさを私に話をすることが誇らしかったのでしょうね。私たちは、夜が更けるまでセーヌ河畔で語り合いました。
片山
いいお話ですね。まさにカルチェラタン。
さて、2014年にサンマリノ共和国において、ヨーロッパにはめずらしい神社が建立された際カデロ大使が大変ご尽力されたと伺いました。
カデロ大使
はい、5周年を迎えました。今年2019年6月最終の土曜・日曜に、その神社で開催された『日本祭』には700人の日本の方が来てくださいました。ヨーロッパ全体で、日本の方が53万人住んでいらっしゃるのですが神社があるのはサンマリノだけですから。
日本にキリスト教の教会が、プロテスタントとカソリックを含めていくつあるかご存じですか?991もあるのです。でも、ヨーロッパ全体で神社は、ひとつだけなのです。
片山
カデロ大使の日本への関心は、パリ留学時代の日本人留学生との交流によって芽生えたと思うのですが、サンマリノに神社を建立し神道との関わりを持たれるなど、日本の伝統文化への思い入れは相当深いものがありそうですね。
カデロ大使
その通りです。やはり日本の伝統文化と歴史は、とても素晴らしいと思っています。日本の大事な財産のひとつです。そして、神道は哲学みたいですね。
神道には、自然環境保護の考え方があります。自然の摂理を司るのはすべて神様で、そこに深い意味があるのではないでしょうか 。
片山
私の考えなのですが、たまたま日本は島国で海に囲まれていて、江戸時代の約260年間戦争に巻き込まれる事なく平和に暮らせたと思うのですね。そのことが、大きな精神的な文化を掘り下げていくことを可能にしたのではないかと。
カデロ大使
日本の伝統や長い歴史に培われた文化は、いま世界中の関心の的です。観光国として中国、韓国、台湾が台頭してきても、やはり日本にはかなわない。日本の観光収入は、将来さらに大きく伸びるでしょう。観光は、これからの国づくりの重要な柱になります。たとえば、人口が5,400万人のイタリアには、年間7,800万人もの観光客が訪れ、国の経済の礎になっています。
片山
同感です。近年、日本を訪れる外国人旅行者の数が増えたと言われていますが、日本政府観光局の統計では2018年度は年間で3,119万人ですからイタリアの半分以下。まだまだ伸びる余地があります。
カデロ大使
インバウンドが増加すると外貨が全部収入になりますね。さらに、観光関連の仕事に関わる国民の仕事が増えGDPが増えます。また、観光はロボットに任せられませんから観光に携わる人が必要となる。つまり、大きな雇用が生まれる。
会長はすでにご存じだと思いますが、ヨーロッパでは日本がいちばん人気があります。行ってみたい国のトップに、いつも日本があがります。